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3. 合成部材のねじりについて14,15)
3−1. 研究の目的
通常のケーソンの構造設計では、ねじりの検討は省略している。しかしFig.8に示す長大ケーソン(高知港)、津波防波堤(釜石港)などの大型なケーソンの構造設計では、浮遊時の波浪、設置後の地盤の不等沈下、不陸などによるねじりの影響を無視できない場合がある(Table1)。ねじりを考慮して合成版式ケーソンを設計するためには、オープンサンドイッチ版要素のねじり特性を把握する必要がある。しかし、これまでオープンサンドイッチ版のねじりに関する研究例はない。
また、サンドイッチ部材に関しては、閉断面を有する沈埋函ではねじり耐力は十分あり検討を省略できるが、上部開放の状態ではねじりの検討が必要となる。現行の設計指針17)には、「サンドイッチ構造のねじりに関する研究成果は過去に見られず、今後の研究が期待される。ただし、サンドイッチ構造部材のねじり耐力は、(中略)鋼殻部だけのねじり耐力、および(中略)コンクリート部だけのねじり耐力よりは大きいと考えてよい。」と記されている。すなわち、綱殻部とコンクリート部の個々のねじり耐力は計算できるが、サンドイッチ部材としてのねじり耐力は不明である。
このように現状では、合成部材の基本的なねじり性状が把握されていない。そこで今回オープンサンドイッチ部材とサンドイッチ部材を対象に、基本的なねじり性状を実験的に把握するとともに、設計法の検討を行った。

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Fig.8 PC Hybrid Long Caisson Breakwater

Table1 Shear Stresses due to Torsion Calculation Results for a Long Caisson16)

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3−2. 実験方法
鉄筋の径と間隔が異なる9体のオープンサンドイッチ供試体と、鉄筋の間隔が異なる3体のRC供試体、および1体のサンドイッチ供試体を製作した(Table2)。
オープンサンドイッチ供試体では、実測厚さ5.80mmの綱板を使用した。ずれ止めとしては、直径16mm長さ100mmの頭付きスタッドを、30cm間隔で鋼板に溶植した。鉄筋量、綱板厚、ずれ止めの種類と間隔等は、合成版式ケーソンの設計例1)を参考にして設定した。
サンドイッチ供試体の綱殻は、0.25m×1m×2mの直方体の内部に、隔壁(せん断補強銅板)を0.5?間隔で配置した構造とした。溶接は脚長4?の隅肉溶接とした。実測厚さ4.27mmの綱板を使用した。下面の鋼板と隔壁と側壁をまず組み立て、その中にコンクリートを打設した。打設後上面の綱板を隔壁と側壁に溶接した。
Fig.9に載荷装置の概要を示す。載荷治具を用いて供試体の対角位置の2点で支持し、他の対角位置2点で下向きに載荷して、供試体にねじりモーメントを与えた。綱板、鉄筋、およびコンクリートのひずみ、供試体の変位、ひび割れ幅を計測した。

Table2 Torsional Loading Test Specimens

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Fig.9 Torsional Loading Setup

 

 

 

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